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元広島カープ・井上紘一インタビュー|【第4回】野球を「辞めない」ために


【第4回】野球を「辞めない」ために

保護者・指導者に伝えたい、本当に大切な関わり方

野球は、いつか終わる。
だからこそ「野球をやっていてよかった」と思える時間を残したい。
指導者・保護者・子どもたちへ、井上紘一からのメッセージ。


目次

野球を辞めてしまう子どもが増えている

――近年、野球を途中で辞めてしまう子どもが増えていると感じますか。

井上:
正直に言うと、増えていると感じます。
「下手だから」「ついていけないから」ではなく、壁にぶつかった瞬間に諦めてしまう子が多い印象です。

昔は競争が当たり前でした。
負けたら悔しい、取られたら次はどうするか考える。
今は、その“踏ん張る経験”が少なくなっている気がします。


厳しさがなくなった時代の難しさ

――指導の難しさも変わってきていますか。

井上:
かなり変わりましたね。
今はハラスメントという言葉もあり、指導者側も慎重にならざるを得ない。

ただ、厳しさ=悪ではないと思っています。
問題は「何のための厳しさか」。

怒鳴ることが指導ではないし、
でも、全くストレスを与えないのも違う。

草に例えるなら、
踏まれても立ち上がる“雑草の強さ”をどう育てるか。
そこは今の時代だからこそ、真剣に考えないといけない部分です。


野球が楽しくなる瞬間とは

――井上さんにとって、野球が一番楽しいと感じる瞬間は?

井上:
一番は、壁を越えた瞬間ですね。
打てなかった球が打てるようになった。
怖かったプレーが、自然にできるようになった。

楽しいという字は「楽」と書きますが、
楽をすることではなく、苦しみを越えた先にある楽しさだと思っています。


成功体験と失敗体験のバランス

――指導では、どちらを重視していますか。

井上:
両方です。
成功体験だけでは人は伸びないし、失敗ばかりでも心が折れる。

だから、
「少し頑張れば届く壁」を用意してあげる。
それを越えたら、しっかり認める。

この繰り返しが、野球を続ける力になります。


保護者の関わり方が、成長速度を決める

――保護者の関わりで、特に大事なことは何でしょうか。

井上:
家に帰ってからの時間です。
指導者が関われる時間は限られています。

家で、
「今日はどうだった?」
「何が一番楽しかった?」
そんな会話があるかどうかで、成長は大きく変わります。

うちでは三者面談や“野球の通知簿”を作っていますが、
それも家庭と一緒に育てたいという思いからです。


勝たせたい野球と、育てたい野球

――勝利と育成のバランスについてはどう考えていますか。

井上:
僕は、勝たせたいとは思っていません。
子どもが勝ちたいと思える状態を作りたいだけです。

勝ちたいのは指導者ではなく、選手。
だから小学生はノーサイン。
走りたければ走る、失敗してもいい。

自分で考え、自分で決断する。
それが後々、大きな力になります。


進路は「野球人生」ではなく「人生」で考える

――進路についての考え方を教えてください。

井上:
野球は、いつか必ず終わります。
だから、野球の先の人生を見据えることが大切です。

強豪校に行くことが正解ではない。
自分が成長できる環境かどうか。
社会に出たときに、野球で学んだことを活かせるか。

そこを一緒に考えていきます。


野球から学べる、本当の価値

――BBPARKの読者に、一番伝えたいことは何でしょうか。

井上:
野球を通して学べることは、本当に多い。
努力、継続、感謝、仲間、挫折。

プロにならなくてもいい。
甲子園に行かなくてもいい。

「野球をやってよかった」と思える経験を、
一人でも多くの子どもに残してあげたい。


育成で変えるべきこと、守るべきこと

――これからの野球育成で、大切な視点とは。

井上:
変えるべきは、
指導者が主役になる育成。

守るべきは、
選手が主役であるという考え方。

教えすぎず、放置しすぎず。
導くけれど、決めるのは本人。

そのバランスが、これからの野球には必要だと思っています。


最後に ― Rising Starとして

井上:
Rising Starには、「輝きながら登っていく星」という意味を込めています。
子どもたち一人ひとりが、自分のペースで輝いてほしい。

野球を楽しみたい人も、
本気で上を目指したい人も、
一度、体感してもらえたら嬉しいです。

『一人一人が自分のペースで輝いてほしい。』

そして、ライジングスターで育った子どもたちの中から、1人でも多くのメジャーリーガーを育成するのが目標です。


井上 紘一(いのうえ・こういち)

元プロ野球選手(広島東洋カープ)。
現役引退後は和歌山を拠点に、少年野球・中学軟式野球の育成指導を行う。
プロ入り直後の大怪我とリハビリ経験を原点に、「野球を嫌いにさせない指導」「成長段階に合わせた育成」を重視。
軟式・硬式の枠にとらわれず、身体づくり・思考力・人間形成を含めた長期的視点での育成に取り組んでいる。


編集後記

野球を、人生につなげるために

野球を辞めてしまう子どもたちが増えている。
その現実に対して、井上さんは感情論ではなく、静かに、しかし強い言葉で向き合っていました。
勝たせたいのは指導者ではなく、勝ちたいと思える選手を育てたい。
進路は「野球人生」ではなく「人生」で考える。
第4回は、指導者・保護者・選手それぞれにとって、“野球とどう付き合うか”を問い直す締めくくりとなりました。


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