第4回|徳山学監督インタビュー
野球を「続けられる文化」へ
―― 学校・地域・大学をつなぐBaseball5の社会実装 ――
野球は「勝てる人」だけのものではない。
誰もが関われて、続けられる文化にできないか――。
第4回では、徳山学監督にBaseball5を学校・地域・大学へどう広げ、社会に根づかせていくのかを伺いました。
競技を超えた“仕組み”としてのBaseball5が描く、野球のこれからとは。
Baseball5は「競技」ではなく「仕組み」
―― 第3回では、Baseball5が持つ教育的思想について伺いました。第4回では、その思想を「どう社会に実装していくのか」をお聞きします。
徳山:
Baseball5は、競技として完成しているのはもちろんですが、それ以上に「使い道」が非常に広いスポーツだと感じています。
学校、地域、大学、行政――それぞれが役割を持って関われる。
そういう“仕組み”として成立している点が、他の競技にはない特徴だと思います。
学校教育における可能性

「全員が主役になれる時間」をどう作るか
―― まずは学校教育の視点からお願いします。
徳山:
学校教育の現場で一番難しいのは、「全員が主役になれる時間をどう作るか」だと思っています。
従来の体育や部活動では、どうしても運動が得意な子、体格に恵まれた子が中心になりがちです。
Baseball5は、
・男女混合
・経験不問
・体格差の影響が小さい
この条件がそろっている。
だから、参加した全員が自然と役割を持てる。
これは教育現場にとって、非常に大きな価値です。
体育・部活動・探究学習まで広がる活用
―― 体育授業以外の活用も考えられますか。
徳山:
十分に考えられます。
「どうすれば点が取れるか」「どう役割分担するか」「誰がどこをカバーするか」。
これらはすべて、探究学習や協働学習そのものです。
スポーツでありながら、
・思考力
・対話力
・判断力
を育てられる。
この点は、従来の野球にはあまりなかった側面だと思います。
地域をつなぐスポーツとして

世代・立場を越えて同じフィールドに立てる
―― 次に、地域という視点ではいかがでしょうか。
徳山:
地域スポーツの課題は、担い手不足と分断です。
子ども、保護者、指導者、高齢者。
それぞれが別々の場所にいて、なかなか交わらない。
Baseball5は、
同じルールで、同じフィールドに立てる。
年齢も、性別も、経験も関係ありません。
この「同じ場に立てる」という点が、地域を一つに束ねる力になると思っています。
「教える/教えられる」から「一緒にやる」へ
―― 親子や世代間の交流にもなりそうですね。
徳山:
そうですね。
指導する側・される側という関係だけでなく、
「一緒にプレーする関係」が生まれる。
それだけで、地域の空気は変わります。
スポーツがコミュニケーションの媒体になる。
Baseball5は、その力を持っていると感じます。
大学が果たすべき役割

大学は「ハブ」になれる存在
―― 大学は、そこにどう関わるべきでしょうか。
徳山:
大学は「ハブ」になるべきだと思っています。
知見、人材、場所を持っている。
たとえば、
・学生が指導補助に入る
・地域イベントを企画する
・教育プログラムとして研究・検証する
大学が関わることで、学校と地域が自然につながっていく。
これは大学にしかできない役割です。
日本福祉大学だからこそ担える意味
―― 日本福祉大学としての意義も大きいですね。
徳山:
本学は福祉系大学として、「誰一人取り残さない」ことを大切にしています。
Baseball5は、競技そのものがインクルーシブです。
だからこそ、大学として関わる意味がある。
スポーツを通じて、社会とどう関わるかを実践できるフィールドだと思っています。
行政・教育委員会との連携可能性
一つの競技で複数政策を横断できる
―― 行政との連携も考えられますか。
徳山:
十分に可能だと思います。
体育、地域振興、健康づくり、ジェンダー教育。
Baseball5は、複数のテーマを一つの競技で横断できる。
行政にとっても、非常に扱いやすいはずです。
野球を「続けられる文化」へ

勝つ野球より、続ける野球
―― 最後に、BBPARK読者へメッセージをお願いします。
徳山:
野球を続けられるかどうかは、才能だけでは決まりません。
環境と選択肢があるかどうかです。
Baseball5は、
「続ける道」を増やすための一つの答え。
勝つ野球も大切。
でも、続ける野球はもっと大切です。
徳山監督にとっての「これからの野球」
徳山:
これからの野球は、「選べる野球」だと思います。
一つの正解に縛られない。
自分に合った関わり方を選べる。
その入口として、Baseball5がある。
私はそう考えています。
編集後記(第4回)
Baseball5は「競技」ではなく「社会装置」だった。
学校・地域・大学をゆるやかにつなぎ、
野球を“続けられる文化”として再設計する仕組み。
このインタビューシリーズが示したのは、
野球の未来はグラウンドの外にも広がっている、という事実だ。
