
子どもにとって「できた!」と感じられる瞬間は、たとえ大人から見れば些細なことでも大きな意味を持ちます。初めて捕球できた、バッティングでボールに当てられた、仲間のために声を出せた――そんな小さな成功体験の積み重ねが「自分はできる」という実感となり、やがて強い自己肯定感へとつながります。
この自己肯定感は、新しい挑戦に踏み出す勇気や、困難を乗り越える粘り強さの土台になるのです。
非認知能力が育つ瞬間
教育や心理学の分野で注目される「非認知能力」とは、テストの点数では測れない「やり抜く力」「協調性」「感情のコントロール」「自己肯定感」といった力を指します。
研究でも、こうした力は将来の学業や社会的な成功に大きく影響することがわかっています。野球の練習や試合の中で得られる「できた!」の体験は、この非認知能力を育む大切なきっかけになります。
逆に、失敗ばかりを指摘され続けると「どうせムリ」「自分には向いていない」と思い込んでしまう危険もあります。だからこそ、子どもが見せる小さな成長をしっかり認め、肯定的な言葉をかけることが不可欠です。

体で感じる成功体験が残すもの
野球は“体で感じる成功体験”ができるスポーツです。
打球の感触やボールとグラブが合った瞬間の気持ちよさ、全力で走りベースを踏んだときの充実感――これらは言葉にできなくても、子どもの心に深く刻まれます。
この体感が「次もやってみたい」「もっと上手くなりたい」という内発的な意欲につながります。繰り返しの練習を通じて得られる小さな成功は、技術だけでなく「失敗しても大丈夫」「努力は裏切らない」といった前向きな価値観を自然に育てます。

親の「ひと言」が変える力
子どものやる気を引き出すのに特別な知識は必要ありません。「今日の守備、よく動けていたね」「フォームが良くなってきたね」といった具体的なひと言が、子どもにとって何よりの励みになります。
結果が伴わない日でも、「最後まで諦めなかったね」「声が大きくなってきたよ」とプロセスを認める声かけは、子どもを前向きにします。
親の言葉はコーチからの指導とは違う形で心に響き、最も身近で影響力のあるエールとなるのです。

野球で得た成功体験は人生の糧に
野球を通じて得た小さな成功体験は、スポーツの枠を超えて活きていきます。学校の勉強や発表での自信、クラブ活動や人間関係での積極性、夢に向かって努力を続ける粘り強さ――これらはすべて「やればできる」という過去の体験が支えてくれます。
だからこそ、子どものうちに小さな成功を積み重ねることが、将来の可能性を大きく広げていくのです。

おわりに
野球は「できた!」を繰り返し体験できるスポーツです。保護者として大切なのは、失敗や結果だけに注目するのではなく、そこに至る努力や工夫を認め、声をかけること。
子どもの挑戦を一緒に喜び、励ます姿勢が、自己肯定感を育て、未来を切り開く力へとつながります。小さな「できた!」を大切に、今日も子どもたちを温かく見守り続けましょう。